加齢黄斑変性症とは
60歳以上の男性に多くみられる病気
加齢黄斑変性症
黄斑(おうはん)は、人間の眼球の網膜の中央部(直径約1.5ミリ程度の範囲)に位置する非常に重要な領域です。
この黄斑部は視力の最も鋭敏な部分であり、色を認識し、細かい視覚情報を処理することができます。つまり、私たちが「物を見る」ために、黄斑はとても重要な役割を担います。
この黄斑の異常によって、視力が低下する病気を「加齢黄斑変性症」といいます。
加齢黄斑変性は近年増加傾向にあり、日本における視覚障害者手帳の交付原因疾患の第4位となっています。
女性よりも男性に起こりやすいという特徴もあります。60歳を超えると発症しやすくなるともいわれていますので、60歳を迎えた(とくに男性)方は、加齢黄斑変性特有の症状に注意をしていきましょう。
加齢黄斑変性のリスク因子
加齢によって発症する可能性が高い病態ですが、そのほかにも発症のリスク因子があります。
- 喫煙習慣
- 偏った食生活
- 紫外線への長時間の暴露
など
若い世代の方であっても、普段の生活習慣の乱れが眼科系疾患発症のリスクを高める可能性があることを心に留めておいてください。
加齢黄斑変性の分類
加齢黄斑変性は「滲出型」と「萎縮型」に分けられます。
滲出型の加齢黄斑変性
網膜のすぐ下に異常な血管(脈絡膜新生血管)ができて、この血管から水がにじみ出たり、出血を起こしたりして黄斑にダメージを与えます。
萎縮型の加齢黄斑変性
黄斑部の組織がゆっくりと痛んできて、最終的に萎縮してしまいます。
ご相談の多い症状
加齢黄斑変性の初期症状
- 中心部が暗く見える
- 部分的に欠けて見える
- 視界がゆがんでいる(見ようとする範囲の直線がゆがむ)
というような状態になります。
これは「アムスラーチャート」と呼ばれるものです。
下記の図を約30cmほど離して、片目ずつ中心の「黒い点」を見てみましょう。(老眼の方は老眼鏡をかけた状態で構いません)
早期発見や治療の効果判定の自己チェックに活用できます。
さらに症状が進行すると
- 視力が低下する
- 色の識別が曖昧になる
など、新たな不具合が起きていきます。
また、
- 見たい部分がよく見えない
- 文字が読めない、文字が書けない
など
日常生活に支障をきたすような状態になってしまう方が多いです。
加齢黄斑変性症の検査
一般的な検査について
まずは問診をさせていただき、目の状態や日常生活への支障をチェックします。
そして必要に応じて当院では下記のような検査を実施します。
- 視力検査
- 眼底検査
- 光干渉断層計(OCT)検査
- 光干渉断層血管撮影(OCT-Angio)検査
眼底検査
眼底検査は、目の奥にある網膜、視神経、血管などの状態を評価するために行われます。
眼底検査によって、出血や網膜のむくみなどが確認できます。
光干渉断層計(OCT)検査
光干渉断層計(OCT)検査は、光を照射することにより、網膜や視神経乳頭などの眼の断層画像を作成します。網膜やその下の新生血管の状態を立体的に表現することができます。
光干渉断層計(OCT)検査は非侵襲的で、痛みや不快感がほとんどありません。また、画像が高精度であり、結果がすぐに得られるため、診断や治療の迅速化に役立ちます。
これらの検査により加齢黄斑変性の可能性が高いと判断される場合は、確定診断に必要な検査(蛍光眼底造影)や治療が可能な施設に御紹介させて頂きます。
加齢黄斑変性の予防と治療
予防
いくつかの疫学研究にて、喫煙が加齢黄斑変性症のリスクを高めることが判明しています。
このため、現在喫煙中の方は禁煙をする必要があります。
また、いくつかの抗酸化成分を含んだサプリメントの摂取も有効といわれています。
萎縮型加齢黄斑変性には現在有効な治療法がありませんが、サプリメントの摂取が推奨されています。
抗VEGF療法
前にお話ししましたように、滲出型加齢黄斑変性は、異常な血管(脈絡膜新生血管)が脈絡膜から網膜のすぐ下に生成され、そこから水がにじみ出たり出血したりして黄斑部にダメージを与える疾患です。
そのため、新生血管の成長を阻害することで、黄斑部の障害を最小限に抑えていきます。
薬物治療では、眼球に「VEGF阻害薬」を注射することで新生血管を縮小させます。
新生血管の増殖を促すのが、VEGFという糖タンパクの一種です。そのため、眼球の中に非常に細い針を用いて「VEGF阻害薬」という薬剤を注射することで、新生血管を縮小させます。
一般にはまず月1回の注射を3~4回行い、その後間隔を空けるか検討します。
再発することがありますので、治療後も定期的な経過観察が必要です。
※ 当院では抗VEGF療法が必要と判断される場合、これらの治療が可能な施設に御紹介させて頂きます。